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2019.11.19

スタートアップが目を向けるべき、バイアウトの方法とは

スタートアップ(創業)して事業が一定のステージに達すると、Exit(イグジット:出口戦略)を考え始める時期になります。最近では、Exit(イグジット)の手法が多様化しています。選択肢が増えたからこそ、今後進むべき道に悩みを抱える起業家も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、起業家としての今後の選択肢の一つであるバイアウトについて、基本的な事項や事例などについてご紹介いたします。

 

スタートアップ企業の多くが目指す、Exit(イグジット)とは?

イグジットの用語の由来は、英単語の「Exitt(出口)」となっています。用語が表す通り、

スタートアップや企業再生で、投資家が投資した資金を最終的に回収し、利益を得る行為を意味します。具体的には、起業家や投資ファンドが保有する株式を第三者に売却し、利益を得る事でExit(イグジット)は実現します。

ベンチャーキャピタルなど投資家から出資を受けたスタートアップにとっては、Exit(イグジット)をどのように描くのかはとても重要となります。そのために、「いつ、どのように、いくらで」など、Exit(イグジット)を実現するためのプランを具体化しておく必要があります。具体的なプランを持っていれば、起業家やそのチームのモチベーションアップにも繋がりますし、ベンチャーキャピタルなどへ投資決定を促すための交渉材料にもなります。

 

スタートアップ企業と投資家がExitするための手法、バイアウトとは?

バイアウトは、Exit(イグジット:出口戦略)の手法の一つです。スタートアップ企業が利益を得る代表的な方法は二つあります。バイアウトとIPOです。

そして、バイアウト(株式譲渡による事業売却)は、株式市場への株式公開(IPO)と並ぶ起業家が利益を得る代表的な手法のひとつです。ここではバイアウトについて説明します。

バイアウトの用語の由来は、英単語の「Buy out」となっています。バイアウトは、買い手側の用語であり、株の買占めという意味があります。株式会社は持ち株が多いほど発言権が大きくなり、買占めにより持ち株を多く持つことで経営に関与する度合いを高めることができます。

そして、バイアウトには様々な目的があります。以前は、経営不振の会社を安く買いたたくネガティブなイメージもありましたが、現在は、不振企業の事業再生はもちろん、後継者への事業引継ぎやスタートアップ企業のExit(イグジット)のひとつとして活用されています。特に、スタートアップのバイアウトが脚光を浴びており、その件数は増加傾向にあります。

スタートアップ企業のバイアウト増加について、買い手側(大企業等)の視点と売り手側の視点(スタートアップ)のメリットは次の通りです。

 

【買い手側の視点(バイアウト)】

 

視点① 事業領域を拡大できる

お客様の価値観が多様化し、しかもその移り変わりが激しい現在、特定の既存分野だけで経営を安定させることがとても難しくなっています。しかし、自社の経営資源で異なる事業分野にチャレンジすることは、成功の確率は決して高いとはいえません。

自社が進出したい事業分野で、優れたサービスを提供し、一定の市場規模を持っているスタートアップは、とても魅力的な経営資源です。スタートアップは、一般的に企業価値が低いため、バイアウトでスタートアップの経営権を入手することは、異なる事業分野への参入を目指したい企業にとっては非常に魅力的です。

 

視点② クローズドイノベーションからの脱却

これまでの大企業は、自社グループだけで製品やサービスを開発するクローズドイノベーションによって、独自の商品を開発・販売してきました。しかし、グローバル経済の進展とともに世界中で価格的にも性能的にも魅力ある商品が提供されるようになった現在では、クローズドイノベーションだけでは限界があります。

そのため、斬新な発想、圧倒的なスピード感を持ったスタートアップをバイアウトによって自社の経営資源とすることで、新たなイノベーションを起こそうとする企業が増えています。

 

視点③ 時流のスピードに乗り遅れない

IT技術を中心に現在は技術の進歩スピードは凄まじいものがあります。一つの企業が研究や開発段階から対応していると、世界規模のスピード競争に追いつけなくなってしまうリスクが高くなっています。スタートアップをバイアウトで手に入れることで、世界規模の競争に耐えうる技術と人材を確保することができます。

 

【売却側の視点(バイアウト)】

 

視点① 資金調達のスピードが早い

多くのスタートアップにとって、事業運営資金などの資金調達は大きな壁となります。資金調達の代表的手段であるIPOは、資金を調達するまでに、長い時間や煩雑な手続き、不確定なリスクが生じます。バイアウトで、一部の経営権は移譲することになりますが、早く大きな金額を得ることが可能となります。以前は、IPOがスタートアップの目標でしたが、現在では、大きな金額でバイアウト(買収)されることがスタートアップの目標の1つとなっています。

 

視点② シリアルアントレプレナーの台頭

シリアントレプレナーとは、アントレプレナー(起業家)の中でも、特に連続して何度も新しい事業を立ち上げる起業家を指す言葉です。

最近の起業家の中には、会社がある程度のステージに立つと、次の起業の立ち上げ資金などにすることを目的にバイアウトで自社株を売却するケースがあります。彼らは、自身の経営手腕により会社を成長させていくよりも、シリアルアントレプレナーとして新しい事業を連続して立ち上げることを目的としています。

 

視点③ 買収企業とのシナジー効果

バイアウトされる側としては、売却による金銭的なリターンも大きな魅力ですが、買収企業の経営資源を活用できるようになることも大きなメリットです。経営資源に乏しいスタートアップにとっては、買収企業による人的、技術的及び財政的支援を継続的に受けることにより、シナジー効果を充分に発揮し、大きな成長を遂げることが期待できます。

 

日本でのバイアウトの動向

アメリカでは、Exit(イグジット)の手法としては、IPOよりもバイアウト(M&A)が一般的でした。早くから金融市場が整備されていたため、手続き的にも時間的にもバイアウトによるExit(イグジット)のほうが、実現可能性が高いと考えられているのです。

それに対し、日本では従来、IPOによるExit(イグジット)が一般的でした。しかし、最近では日本でも、バイアウト(M&A)によるイグジット件数は増加傾向にあります。バイアウト(M&A)に対するネガティブなイメージ、例えば「買占め」「身売り」などのイメージを浮かべる経営者が少なくなかったことが、その背景にあります。

前述したとおり、バイアウトは、買い手側、売り手側に大きなメリットがあり、多くのベンチャー起業家や大企業が、バイアウトに対して前向きな認識をするようになってきています。IPOに比べ、短い時間でExit(イグジット)できるバイアウトは、今後も、更に増加していくと考えられます。

 

バイアウトの方法

バイアウトの方法として、まず誰が買収するのかで、経営者(MBO)、従業員(EBO)、大企業(第三者)の3つに区分されます。また、買収側の買収資金調達の手段として、自己資金、銀行などからの借入資金、LBO(レバレッジド・バイアウト)の3つの手段があります。

 

MBO

MBOは、Management Buyout(マネジメント・バイアウト)の略称です。MBOとは、経営陣自らが買い手となり、自社や自社の事業、子会社を買収するバイアウトの一形態です。上場企業には、個人投資家を含め多数の株主が存在し、さまざまな制約があります。例えば、株主に対して短期的に利益を出すことを要求されたり、経営そのものに口を出されたりします。

そのため、以前は、MBOで経営権を握り、上場廃止をして株式を非公開にすることで、経営に対する干渉をできるだけ小さくし、加えて、敵対的買収からの防衛策ともされていました。最近では、株主が求める短期的な利益よりも、事業領域の拡大や革新的な製品・サービスの開発など中長期的な企業戦略を展開したいとの経営意思から、MBOによる上場廃止を決定する企業も増えています。

2005年のアパレル大手のワールドを皮切りに、幻冬舎(出版)、吉本興業株式会社 (芸能プロダクション)などがMBOによる上場廃止を行っています。

 

EBO

EBOとは、Employee Buyout(エンプロイー・バイアウト)の略称です。企業の経営陣ではなく従業員がその企業の株式等を取得し、事業を買収したり経営権を取得したりするM&A手法の一つです。

EBOは、大企業では、一事業や一部門の独立、経営陣の乱れによる経営破たんの危機に追い込まれた時など利用されます。中小企業では、従来から従業員への事業承継に活用されています。 EBOは企業内部の従業員が事業を引き継ぐため、他の従業員や取引先など関係当事者にとって、経営方針は継続していくことがアピールできます。

 

LBO

LBOとは「Leveraged Buyout(レバレッジド・バイアウト)」の略称であり、バイアウト(M&A)資金調達法の1つです。日本での代表的な事例としては、ソフトバンクによるボーダフォン日本法人買収があります。

LBOの仕組みの特徴は「買収対象の企業のキャッシュフローや資産を担保にして借入を行う」という点にあります。通常、バイアウトでは、買収する企業が銀行から借り入れを行いますが、LBOはその逆の買収される側が金融機関から借入れを行うことになります。

 

■LBOの仕組み

 

項目 概要
ステップ1 投資家・経営陣によるSPCの設立 買収対象の企業の株式の買い取り(企業の受け皿)を行うSPC(特別目的会社)を設立する
ステップ2 買収資金を金融機関より調達 買収対象の企業のキャッシュフローや資産を担保にして金融機関から買収資金を調達する
ステップ3 既存株主の株式(100%)を買い取り 調達した資金により、最大のリターンを得るよう既存株主の株式(100%)を買い取る
ステップ4 SPCと対象会社の合併 買収を完了次第、SPCと株式対象の企業の合併を行い、買収対象の企業を株式非公開企業に変える
ステップ5 金融機関からの融資を返済 買収後に経営改善に取り組み、キャッシュフローや資産売却などにより融資を返済する

 

スタートアップはIPOとバイアウトどちらを目指すべきか

スタートアップのExit(イグジット)としての選択肢であるIPOとバイアウト。それでは、スタートアップとしてどちらを選択すべきなのでしょうか。起業家としての想いや将来の企業価値など選択肢を絞る上で考慮しなければいけないことは様々です。

まずは、Exit(イグジット)としてのIPOとバイアウトのそれぞれのメリット・デメリットをきちんと理解しておく必要があります。

 

IPOのメリット・デメリット

起業家はまず株式を発行して出資を受け、これを元手に会社経営をしていきます。この株式は起業家と、出資した株主のみが保有する未公開株となります。

IPOとは、未公開株を証券取引所に上場して、一般の投資家が購入できるように新規株式を発行することを意味します。一般的に、公募価格は創業時に設定した株価よりも高くなり、IPOで株式を公開することで、起業家が保有する株式の時価総額は大きく上昇し、創業者利益を得ることができることになります。

 

【メリット】

① 起業家が経営を継続でき、更なる成長を目指せる

IPOでは、上場する時に一定数の持ち株は売却しますが、全ての持ち株を売却する訳ではありません。その為、起業家は、IPO後も経営者として引き続き経営を行うことができます。「会社を大きく成長させたい」経営自体に魅力を感じる起業家とっては有力な選択肢となります。

 

② 金銭的なメリットが大きい

一般的に、IPOを実施すると、株価が急激に上昇します。一定の持ち株を投資家などに売却することで、莫大な利益(創業者利益)を獲得できる可能性があります。

 

【デメリット】

①多大な費用や時間が必要

IPOを実現する為には、様々な条件を満たす必要があります。証券取引所では、上場に必要な条件(形式審査基準)を設定しており、時価総額や利益額等、満たすべき数値条件をクリアする必要があります。

そのため、条件をクリアさせるため、一定の規模以上に会社を成長させる必要があり、成長させるための時間やコストを要します。また、条件を達成できるかどうかも未確定であり、要した時間やコストが無駄になる可能性があります。

条件を満たしたとしても、上場審査の基準には、もうひとつ「実質審査基準」があります。 実質審査基準は形式要件に比べ、金額や数値などの明確な基準はありません。将来的に収益性を維持し、適切な管理体制を構築しているかを書類審査、ヒアリングや実地調査などで審査されます。そのため、IPOの審査を受けるだけでも時間的、金銭的な負担が生じることになります。

 

② 上場後もコストが継続

首尾よく上場を果たしたとしても、維持するためのコストが発生します。証券取引所・株主名簿管理人・監査法人など外部への支払いが発生すると同時に、内部的にも内部統制充実のための管理体制構築や 四半期開示などのディスクローズコストが増加します。

 

バイアウトのメリット・デメリット

バイアウトは、スタートアップ側からすると持ち株の売却であり、経営権を買い手側に譲渡する行為です。

 

【メリット】

①短期間でEXIT(イグジット)を実現できる

バイアウトをする際に最大の魅力となるのは、IPOよりも早くEXIT(イグジット)を実現できることです。IPOでは、上場審査基準などを満たす必要がありますが、バイアウトは、買い手側が買いたいと意思表示をすれば、その時点で成立します。またM&Aの手続き自体も、買い手、売り手、金融機関など当事者間の合意で成立しますので、IPOよりはるかに簡単です。

 

② 最適なタイミングで売却できる可能性が高い

最近では、IT技術を中心にプロダクトライフサイクルの短命化が進んでいます。マーケットの変化、プロダクトの成長性等は目まぐるしく変化しており、手続きなどに時間を要すると最適なタイミングでExit(イグジット)ができないリスクが高まる可能性もます。バイアウトは、短時間でのExit(イグジット)できるため、最適(企業価値が高い)なタイミングを狙える可能性が高くなります。

 

【デメリット】

① 経営の主導権を握れない

バイアウトとは、起業家の持ち株を第三者に売却することです。そのため、持ち株比率によっては、起業家が自らの手で継続して事業を成長させたいと考えても、主導権を握ることが難しくなる可能性があります。

 

② 一般的には金銭的なリターンが低い

バイアウトの場合、厳しい審査基準を経てIPO後に評価される時価総額に比べ、低い時価総額でイグジットすることになる可能性が高くなります。

 

スタートアップ売却事例

最近では、大企業を中心にスタートアップをバイアウト(買収)する事例が増えてきています。最新のIT技術の取り込みや将来性のある市場への進出などにつながるバイアウトは、大企業にとっても非常に魅力的です。

 

KDDIによるソラコムのバイアウト

KDDIは2017年に、IoTスタートアップのソラコムをバイアウトしました。正式な買収価格は非公開であるものの、200億に及ぶと言われています。ソラコムは設立からわずか2年半でのExit(イグジット)になっています。KDDIはソラコム以外にもnanapiなど積極的にスタートアップのバイアウトを行っています。

 

ヤフーによるdelyのバイアウト

ヤフーは2018年に、レシピ動画「クラシル」を運営するdelyを93億円でバイアウトし、連結子会社化しました。この買収で、dely代表の堀江氏は一株も手放さない形でのバイアウトになりました。

 

DMMによるBANKのバイアウト

DMMは、2017年に70億円で即時買取りサービス「CASH」などを運営するBANKをバイアウトしました。設立からわずか9ヶ月という驚異的なスピードのExit(イグジット)です。一度はDMMの傘下となりましたが、その後2018年にBANKがDMMからMBOを行い、再び経営権を取り戻しました。

 

【まとめ】バイアウトという出口戦略も検討してみよう

ベンチャー企業の経営戦略は大きく分けて3つあります。まずは長期経営。最近のベンチャー起業家の戦略としては数少ないですが、株主や親企業に振り回されることなく、長期的に安定的な企業価値の増加を目指していきます。

近年は、IPOや、バイアウトでExit(イグジット)することをゴールとして考える起業家が主流となっています。

以前は、ベンチャー起業家が目指すゴールはIPOが主流でした。上場による資金調達で、さらに事業を拡大していくことを目標にしています。しかし上場に至るまでのお金と時間が足りずに挫折する会社が数多く存在したのも事実です。

近年の起業家は、IPOではなくM&Aを目指す人が増えてきています。起業家のバイアウト(M&A)に対する価値観が変化し、資金調達や経営資源の取得だけでなく、バイアウトによる成長サイクルをショートカットするベンチャー企業も増えています。

金融市場や大企業の投資環境などを考えるとバイアウトによるExit(イグジット)は、現在、有力な選択肢といえるのではないでしょうか。

 

 

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